工数管理は誰のため?

工数管理 03 コラム

工数管理ため?

「工数管理とは?」と聞かれて、何を思い浮かべますか? コスト、採算、残業、業務量・・・様々だと思いますが、多くは“管理”のためというイメージが強いのではないでしょうか。“管理”は当然必要なことですが、せっかく集めている工数データを“改善”に使わないのはもったいないと思いませんか?
今回は、デンソークリエイトの改善活動の経験をふまえ、現場での“改善”につながる「工数管理」についてご紹介します。

【コラム】竹下 千晶 (デンソークリエイト イオタ推進部)

「管理者主体の工数管理」は、現場の実状と隔たりがある

企業・組織としての損失を最小限に留め、利益を生むためには“管理”は大切です。
しかし、管理者が主体となって行う「工数管理」の場合、現場との間に次のような温度差を生むことがあります。

管理者視点の「工数管理」は結果の評価

「プロジェクトや組織の採算を見える化したい」「業務量の調整をするためにメンバの負荷を知りたい」というのは、管理者の役割から考えても当然の思いです。そのために、現場に対して工数の報告を求めます。
ここで、採算や負荷というのは、ある期間でのプロジェクト・案件単位、もしくは、人単位の総工数で見ます。管理者は、その“結果”を評価し、採算の善し悪しを判断して、プロジェクト・PMに対して指示・指導、場合によっては追求したり、実績工数や残業が平準化されるように業務量やリソースの調整をします。

つまり、管理者主体の工数管理では過程や内容はあまり関係なく、評価・判断基準が「使った工数(結果)」のみになってしまいます。しかし、現場には現場の事情があり、いろんな工夫や努力をしていたり、残業していない人が必ずしも業務量が少ないとは言い切れないなど、総工数(結果)には表れないことがたくさんあります。

現場は工数を管理されることに抵抗がある

採算の評価や業務量・リソース調整は、管理者にとって重要な役割ですが、現場から見ると、工数を報告することによって厳しい指示や追求、高い要求を管理者から受けたり、思いもよらぬ業務内容や配置転換をされる、という思いをもっていても不思議はありません。
また、過程は評価されず総工数(結果)で評価されてしまうと、現場は管理者に工数を見られることに抵抗を感じたり、管理者に見せるためにデータ操作をするとういことも起こり得ます。管理者に求められるため、現場は「管理者のため」の工数を集計し、自分たちにとっての嬉しさを感じることなく、やらされ感いっぱいで工数の報告を繰り返すことになります。
そうなってしまうと、いくら管理者が工数の報告を求め、それに対して評価をし、管理をしようとしても、思ったような成果が得られないということになってしまいます。

Column:工数で見えること

工数は、作業内容や担当する人の違いに関係なく必ず得られるアウトプットであると考えることができます。また、時間という共通の単位で測ることができます。必ず得られ、共通の単位を持つアウトプットというのは工数が唯一と言ってもよいかもしれません。
WBS(Work Breakdown Structure)を策定し、そのタスク毎に工数を計測できるようにしておけば、「何に、誰が、どれだけ工数をかけたのか」が分かります。それにより、効率が良いところ/悪いところ、手戻り(やり直し作業)の量など、具体的な改善点も見えるようになります。

TimeTracker NXでは、「タイムシート」という機能で工数を入力します。「タイムシート」は予定表のような見た目なので、「何に、誰が、どれだけ工数をかけたのか」だけでなく、「いつ」という時間軸も合わせて見ることができます。それによって、単純な個々の作業の時間だけでなく、どのような順番・タイミングで作業をしているのかが見え、個人個人の日々の仕事ぶりまでも見える「時間日誌」にもなるのです。

TimeTracker NXのタイムシートは
「いつ、何に、誰が、どれだけ工数をかけたのか」が分かる

現場視点の「工数管理」なら“改善”が変わる

事実に向き合い改善に取り組める

多くの現場で、「手戻りを減らしたい」「品質を向上したい」「ムリ・ムダ・ムラを減らしたい」・・・という悩みや改善意欲をもたれているのではないでしょうか?
前述のように、工数から「業務・作業の改善点」や「日々の仕事ぶり」が見えてきます。それをうまく活用すれば、改善の糸口を掴むことができます。手戻りや不具合対応にどれくらいの工数がかかっているのか、レビューにどれくらい工数が投入できているのかなど、具体的な「量」が分かると、どれくらい改善したらよいのか、どのくらいが適当なのか、という目安が立てやすくなるのです。
また、計画通りに仕事が進まない時に、よく「割り込みが多い」と思いがちですが、「タイムシート」を眺めていると、実は他に要因があることが見えてきたりもします。工数は、今現在の“事実”を教えてくれるのです。

成果が見えると愉しくなる

見えてきた“事実”を元にして改善に取り組んだ結果も、やはり工数に現れます。改善の効果も工数が教えてくれるのです。成果に喜びを感じることができれば、改善に対する意欲も湧きますし、愉しくなってきます。
改善活動自体はなかなかその効果が計りにくいものなので、効果が感じられず挫折しがちですが、工数を活用して効果も見える化することで、成果に喜びも感じられ、継続しやすくなります。

現場が使うと精度が上がる

工数を活用して改善活動に取り組みはじめると、工数を見る機会も増え、正確なデータが欲しくなるので、徐々に工数の精度は上がってきます。現場が効果を体感できてくると正しく工数を集めることへの意欲も増すので、精度はさらに向上します。その結果、現場が使う改善のためのデータとしての質も上がり、管理者が必要なデータとしても自然に精度が増します。
以前は、管理者のために“あつらえた”データで、評価されたり、振り回されたりするため、管理者にデータを報告することに抵抗を感じていた現場も、正確なデータで管理者が判断するようになれば、受け入れやすくなります。
現場が、自分たちの改善のためのデータとして工数を活用することが、管理者にとっても現場にとっても嬉しいものになっていくのです。

工数管理は「自分」のため

工数管理は誰のためなのか?
そもそも、誰かのため、ということ自体がおかしな話なのですが、強いて言うならば、工数をアウトプットしている“自分自身”のため、ではないでしょうか。
日々、様々な悩みと戦い、工夫したり、頑張った証の一つが工数だと思います。失敗も成功もありますが、工数を通して自分自身や自分たち(自分のチーム)と向き合ってみてはいかがでしょうか。

デンソークリエイトでは、「現場で一人ひとりが自ら気づき改善する」という現場主体の改善をモットーとした改善活動を勧めています。その重要なインフラとしてTimeTracker NXは今では欠かせないものになりました。 TimeTracker NXは、工数管理・プロジェクト管理機能をもつ「改善活動支援ツール」。改善活動が現場から生まれ、現場で続けられることをサポートし、現場が喜びを味わえるツール、それがTimeTracker NXです。