工数入力の定着と精度向上を目指す

工数管理 01 コラム

工数入力定着精度向上目指

プロジェクト管理やプロセス改善には何かと計測がつきものですが、「工数入力(計測)が定着しない」
「正しい工数が集まらない」という悩みをおもちの方も多いのではないでしょうか?
今回は、「工数入力が定着しにくいメカニズム」や「どうなったら定着と言え、精度の高いデータと言えるのか」について、経験から分かってきたことをご紹介します。

【コラム】 竹下 千晶 デンソークリエイト イオタ推進部

なぜ工数入力は定着しないのか

Excelや工数管理ツールなどで工数を入力する仕組みを用意し、
 「工数実績を取ろう!」「毎日工数を入れましょう!」
と取り組みを始めても、うまくいかないことがよくあります。
なぜ、「改善したい」「良くしよう」という思いで始めるのにうまくいかないのでしょうか?

工数入力の定着とは?

そもそも、工数入力の定着とはどういう状態でしょうか?実績工数を取れていたとしても、「本当に定着している」、「正しいデータである」ことを判断するのは難しいことです。
様々な解釈はあると思いますが、「毎日その日の工数が入力されている」状態を維持できていれば、定着と言えると思います。

なぜ「毎日」なのか?週に一度、ましてや月に一度、その期間の工数をまとめて入れていては正しく入力するのは困難ですし、工数入力が日常的な行為になっているとは言えないのではないでしょうか。
日常的に工数を入れられている状態、つまり「毎日入力」が、定着の第一歩なのです。

毎日の工数入力には「後工程」がない

業務における様々な作業には必ずと言ってよいほど「後工程」が存在します。後工程は、次の工程の作業であったり、承認や確認であったり、作業・活動によって違いますが、後工程が存在することで前工程の業務は自然と達成されていきます。
しかし、工数入力はどうでしょうか?週に一度、月に一度という単位で、プロジェクトや組織で集計するタイミングがあると思いますが、強いて言えばそれが後工程とも言えます。
ただ、前項で触れたように、定着とは「毎日入力」です。週や月の集計では、その期間内のデータの合計値が集まればよいので、毎日入力されているかどうかは問われません。つまり、「毎日の工数入力」は、行わなくても後工程に迷惑がかかることがなく、必要性を感じにくい作業なのです。そのため、定着しにくいのだと考えられます。

工数入力に工数がかかる矛盾

元々何か目的があって工数計測を始めるのですから、週や月、プロジェクトのフェーズなどの単位で集計するはずです。毎日の入力が定着していなくても、集計のタイミングになれば、必ずフォローが入り、一斉に工数を入力することになります。しかし、それは非常に非効率です。

毎日・都度工数を入れるのが最も効率が良い

一日の終わりに今日何をしていたかは、ある程度正確に思い出せそうです。しかし、一週間分、一ヶ月分、数ヶ月分となったら、その期間のことを正確に思い出すのは難しく、まず無理でしょう。それを思い出すのにも時間がかかりますし、たくさんの工数を入力することになるので時間もかかります。すると、工数を入力するために工数をかけてしまう、つまり、改善や効率化を狙って工数を計測しているのに、余分な工数がかかるという矛盾が起きてしまいます。
思い出す手間や入力する手間を考えると、その日の工数はその日のうちに毎日入力した方が実は簡単です。さらに、一日の中でも、作業の切れ目ごとに都度入力すれば、思い出す必要もありませんし、入力自体も数秒で終わります。これまで週や月などの単位でまとめ入れをして使っていた工数入力作業の時間が、毎日・都度行うようにするだけで、ほぼゼロになるわけです。

Column:簡単なことほど時間が経つと実施が難しくなる

少々余談ですが、その場で終わらせれば時間がかからないことが、時間が経つと難しくなるということが、私たちの業務の中にはたくさんあります。工数入力は代表的なものですが、議事録や小さな依頼への対応などもそうです。
それらは共通して、「思い出す」という行為が発生します。時間が経てば記憶は薄れるので、思い出すのに時間がかかりますし、正確性も失われます。そのため適切に実行するのが難しくなるのです。
さらに、「チリも積もれば山となる」と言いますが、一つ一つは小さな作業でも、溜まってしまうことでどんどん大きくなります。厄介なことに、ただのチリと違って単に数が増えるだけでなく、一つ一つも元の手間よりも増えるので、指数関数的な増え方となり、いつか手に負えなくなってしまいます。
「思い出す」という作業を減らすだけで、意外に大きな効果があるかもしれませんね。

都度入力が定着すると自然に精度が上がる

工数が毎日入力されるようになっても、記憶が新しいうちに入力しているからと言って、必ずしも精度が高いとは言えません。もちろん、週に一度、月に一度だった頃と比較すれば、精度は高くなります。しかし、はじめのうちはまとめて入れる癖がついてしまっていますし、管理者や上司から毎日入れるようにフォローされて嫌々仕方なく入れていることも少なくありませんから、毎日“まとめてざっくり”入れている状態かもしれません。
しかし、根気強く毎日入れることを続けていると、次に述べるような変化が見られるようになります。

定着すると工数の粒度が細かくなる

毎日工数を入力するようになると、一日の終わりに入れるよりも、作業の切れ目ごとに都度入れる方が簡単で効率的ということに気が付き、段々と都度入力するという癖がついていきます。都度工数を入力するようになると、一つ一つの作業や、かかる時間に対する意識も高まるため、入力の単位が次第に細かくなります。つまり、粒度が細かくなっていくのです。
はじめは、「午後の会議以外は設計」というようにざっくり入れていたものが、作業の切れ目ごとに、「ある部分の設計」「そのレビュー」「指摘修正」・・・というように具体的な作業に分割された実績工数の入力に変わっていきます。
都度入れているので手間もなく、余分な工数をかけてもいないのに、具体的で詳細な精度の高い実績が収集できます。こうなってくると、本当に毎日の工数入力も定着し、精度も上がってきた状態が維持できるようになります。

定着までには時間が必要

毎日工数を入力するようになり、都度入力によって細かい粒度で実績工数が集められるようになるのには時間がかかります。個人個人では早く定着する人もたくさんいますが、組織全体に定着するとなると半年から数年、粒度が細かくなるのにはさらに半年くらいはかかる、と思った方がよいでしょう。

風土の醸成をする

前項で触れたように、工数入力は「癖がつく」という質のものなので、それは言い換えると「風土の醸成をする」ということでもあります。風土の醸成には時間がかかります。結果を急ぎすぎると、強すぎる管理で縛ったり、途中で諦めてしまうことになりかねません。
TimeTracker NXは、操作を直感的にするなど、入力のしやすさを追求し、工数入力をする手間を小さくすることで工数入力の定着や精度の向上をサポートしています。一旦「風土」になってしまえば、維持は簡単です。焦らず取り組むことをお勧めします。