製品企画・現場改善コラム

工数管理02 インタビュー

工数管理機能とプロジェクト管理機能をあわせもつ意義

工数管理ツールやプロジェクト管理ツールはそれぞれ様々なものがありますが、TimeTracker FXのように両方の機能を搭載しているケースは多くはありません。今回は、 工数管理とプロジェクト管理機能をあわせもつことにどのような意義があるのかを、TimeTracker FXが二つの機能をもつツールに発展した経緯をよく知るデンソークリエイトの後藤氏に聞きました。

【インタビュー】 後藤 健太郎 デンソークリエイト プロジェクトセンター現場改善推進室

デンソークリエイトが工数計測を始めた理由

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TimeTracker FXは、最初は工数計測のためのツールだったというのは本当ですか?

後藤

本当です。TimeTracker FXは最初から工数管理とプロジェクト管理の二つの機能をあわせもっていたわけではありません。当初は工数管理機能を中心としたツールでした。
デンソークリエイトでは会社創業時から工数を計測してきましたが、当時の工数の用途は主に「勤怠管理」です。その後「プロジェクトの分析」にも利用していきました。
デンソークリエイトにはタイムカードがありません。そのため、社員は毎日何時から何時まで、何時間働いたのかを工数として入力し、月末に報告していたんです。報告しないと給料をいただけないわけですから、全員が必ず工数を入力するようになりました。
ただ、工数の精度は低かったです。実績工数が必要になるのは月に一回だけでしたので、この頃は月末に工数を“まとめ入れ”するような光景をしばしば目にしました。コラム「工数入力の定着と精度向上を目指す」でもご説明していますが、“まとめ入れ”をしている段階では精度の高い実績工数は集まりません。でも、勤怠管理では工数の細かい内訳までは不要なので、実績工数の精度はその当時は大きな問題になっていませんでした。

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工数をプロジェクトの分析に使うようになって細かい内訳が必要となったんですね?

後藤

そうです。ISO9001をベースとした品質マネジメントシステムを導入し始めた頃からは、プロジェクト活動を分析するための一つの指標として、工数を活用するようになりました。
開発完了時など、プロジェクトの節目となるタイミングで、どの工程にどれくらいの工数を割いていたのか、レビューやテストに十分な時間を使えていたかなどを見て、プロジェクト活動の妥当性を判断するようになりました。
そして、これらを分析できるよう、プロジェクト単位やその中の大きな開発案件の単位まで掘り下げて実績工数を集計するようになりました。さらに、会社として標準的な作業分類を定義し、「設計」「実装」「テスト」などの作業工程や、「実作業」「レビュー」「不具合対応」などの作業種別に分けて工数を計測し始めました。

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ところで、その頃はどのようにプロジェクト管理を行っていたのですか?

後藤

工数計測の仕組みとは全く別で、Excel帳票などを使いながら管理していました。
プロジェクトマネージャは、プロジェクト計画立案時にWBS*を定義し、作業量を見積もった上で、具体的なスケジュールに落としていました。しかし、プロジェクト管理では作業レベルの詳細なWBSで管理していたのに対し、工数はプロジェクト全体での大まかな工程で管理していたので、粒度が一致しておらず、実績工数を集計しても進捗管理などには使えていませんでした。

※WBS(Work Breakdown Structure):タスクなどの作業のツリー構造

TimeTracker FXの開発、実績工数を使ったプロジェクト管理へ

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別々で管理していた工数管理とプロジェクト管理が融合したきっかけは何ですか?

後藤

「プロジェクト管理において定量的な進捗管理をどう実現するか」という課題への取り組みが大きなきっかけでした。解決策として、「毎日入力している工数を、日々のプロジェクト管理に活用しよう」ということになりました。そして、工数管理とプロジェクト管理の両方の機能をあわせもつツールとしてTimeTracker FXが開発されたんです。
TimeTracker FXでは、プロジェクトマネージャがプロジェクトの計画時に定義したタスクごとに、実績工数を集計できます。工数計測の仕組みとプロジェクト計画のツールを一本化することで、自分の立案した計画と実状との差異を一つ一つの細かな作業単位で簡単に確認でき、進捗管理やプロジェクト活動の分析、改善などにも活用できるようになりました。

工数管理とプロジェクト管理の機能を両方あわせもつメリットとは?

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二つの機能をあわせもつと、現場にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

後藤

現場にとってのメリットはたくさんありますが、主なメリットとしてこの三つについて順番にご説明しましょう。

  • メリット1進捗の遅れの原因や妥当性が判断できる
  • メリット2コストオーバーした原因箇所が特定できる
  • メリット3品質確保の活動の妥当性が分かる

 

メリット1進捗の遅れの原因や妥当性が判断できる

よくあるプロジェクト管理ツールでは、タスク毎に進捗率を入力するだけで「実績管理ができる」と表現しているものもあります。しかし、進捗が遅れている場合、進捗率だけではその原因の特定は難しいでしょう。進捗遅れの理由としては、例えば「実際に作業しているが生産性が悪く進んでいない」「そもそもその作業に工数を投入できていない」などが考えられますが、どちらの理由なのかはタスクの進捗率だけでは判断できませんよね。一方、タスク毎に実績工数が入力されていれば、その作業にそもそも時間が使えているかどうかが分かります。成果量*を入力しておけば生産性も分かります。タスク毎の工数を計測していくことで、そもそも時間が使えていないのか、生産性が悪いのかなどの理由が分かるので、対策も打ちやすくなります。
また、進捗が進んでいたとしても、それを良いと判断できるとは限りません。予定よりも時間を多く投入しているから進んでいるだけという可能性も考えられます。その場合、そのタスク単体では良いですが、後工程のタスクを実施する際に工数不足になるかもしれませんよね。進捗と工数をセットで考えれば、進捗の妥当性も判断できるようになるんです。

※成果量:作業のアウトプット量をTimeTracker FXでは「成果量」と呼んでいます。

 

メリット2コストオーバーした原因箇所が特定できる

プロジェクト全体などの大まかな単位で実績工数を計測すれば、プロジェクトの採算が分かります。しかし、コストオーバーした場合にその原因を突き止め、改善するということまではできませんよね。
特に知識労働におけるプロジェクト管理というのは繰り返し性が低く、不確実性が高いもの。2つと同じプロジェクトが無いからこそ、実際にプロジェクトを進めながらその途中で改善していくというアプローチが重要になります。
改善のためには、コストオーバーした作業が何であるかを事実から突き止めていく必要があります。プロジェクトのWBSの単位で工数を計測することで、どこでコストオーバーしているかが分かります。プロジェクトで計画したWBSの単位で計画工数を出し、その上で実績工数も把握するというのはコスト改善の第一歩なんです。

 

メリット3品質確保の活動の妥当性が分かる

工数というと「コスト」「生産性」という意味合いが強く、品質とは関連が無いものと思われるかもしれません。しかし、レビューのような「品質を確保するための作業」に投入した工数を計測していくことで、そのプロジェクトの品質を工数で見える化できます。これも、「プロジェクト全体で何時間」という計測ではなく、プロジェクト計画で作成したWBSの単位でレビューの工数を計測していけば、どの部分にどれだけの時間レビューを実施したかが分かり、ばらつき無く品質確保のための活動ができているかが判断できます。プロジェクトでのレビューの総工数としては妥当でも、部分的に見ると大きなばらつきがあるという場合もあるためです。
さらに計測を繰り返していくことで、計画としてどれだけレビューに工数を見込んでおけば、品質が確保できるかが分かるようになります。もちろん、TimeTracker FXならプロジェクト管理機能としてレビューの日程計画も立てることができるので、「日程的に妥当なタイミングであるか」という点と「工数として妥当な時間をかけてレビューしているか」という両方の観点から判断できるようになります。

このように、実績工数は進捗・コスト・品質など多方面のプロジェクトの実状を表す貴重なデータです。そうして集めた過去の実績工数を次のプロジェクトの見積もりにも活かすことで、見通しよくプロジェクトを運営できるようになります。TimeTracker FXは「工数管理・プロジェクト管理ツール」とうたっていますが、もともとはこうした改善活動の支援を目的としたツールです。現場の改善活動から生まれ、デンソークリエイトの長年に渡る工数管理・プロジェクト管理の実績をもとに、その機能は今も改善されつづけています。

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「カイゼン」の取り組み :TimeTracker FX開発・改善の足跡

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